TENSEI塵語

2009年02月14日(土) 「悼む人」を読んだ

1週間以上中断していた天童荒太の「悼む人」をさっき読み終えた。

堪らないなぁ、、これは。。
特に、母親巡子の部になると、頻繁に目が潤むので、
人がいっぱいいるところで読むのはつらすぎる。
何度老眼鏡を外して、目を拭いたことか。。。

無差別に人の死を悼んで旅をしている静人の母は、
すでに死の宣告を受けて、余命が短い。
一方、静人の妹の美汐は、静人の風評のために恋人に捨てられ、
その元恋人の子を生もうとしている。
死が近づいている母と、その母を支える夫と、
母をいたわりつつ新しい生命を宿している娘と、
その娘に幼いころから恋をしている従兄弟と、
その他さまざまな人間関係をこう巧妙に描かれたら、困るじゃないか!

静人となんとなく一緒に旅をする女。。。
彼女は、夫に執拗に懇願されて、自らの愛を守るために夫を殺した。
静人の行動が、なんとなく気になり、同行するうちに、
それが大きなドラマとなる。
自分自身は、一度も静人と同じように悼んだりしないのだけれど。。

目の潤みやすい展開でも、大泣きするようなところはなかったのだが、
やはり、ラストにはなかされちゃったなぁ。。
「倖世は、左手を伸ばして静人の足跡に触れ、
 右手を広げて日の光を受け止め、胸の前で両手を重ねた」
読んでない人には何のことかわからないだろうけど、
なんと重い場面であろうか。。。

「悼む人」の静人も、静人について歩いていた倖世も、
これからさらに旅を続けるだろう。
「亡くなった人を忘れない」旅を。。


ちなみに、私自身、今癌に冒されてても不思議じゃない身だし、
数年以内に、いきなり、あと○カ月です、と宣告されるかも、、と、
そんな不安も抱かずにいられないような身なので、
身につまされるような思いで読んでしまったのだった。


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