TENSEI塵語

2009年02月17日(火) 湊かなえ「告白」

何だか芥川の「藪の中」みたいな、、と、
第2章を読み始めた時に思ったのだが、
真相をうやむやにした「藪の中」とは違って、
真相を深め、背景を深め、さらに物語が進展する6つの告白。。

第1章
 教師森口悠子が担任のクラスの生徒に向かって語る。
 辞職すること、シングルマザーとなった経緯、
 HIV患者のこと、少年犯罪について、、、そして、
 大切なひとり娘をこのクラスの生徒A・Bに殺されたこと。
 本人たちもいるこのクラスの中で、事件の真相と復讐について語る。

第2章
 クラス委員長の美月が、その後のクラスのようすを語る。
 生徒Bは不登校、、、生徒Aはクラスで迫害を受ける、、が。。。

第3章
 生徒Bの姉が語り始めるが、母の死の真相を求めて読み始める
 母の日記がこの章の中心となる。
 母はこの息子を溺愛、、父はほとんど関与してないようだ。。

第4章
 生徒Bの告白。
 母に対する思い、事件の発端から、不登校中の心境まで。
 母殺害の真相。。

第5章
 生徒Aの告白。
 母への思慕と孤独。母に認められたいゆえのさまざまな試み。。
 事件の真意とその後の心境、、そして、新しい犯罪。。。

第6章
 生徒Aのケータイに語りかける森口悠子の告白。
 思いがけない復讐劇、、、、、、、、、、、、、、、で幕。



読み始めてまず、第1章の悠子の語り口に引き込まれてしまった。
もちろん、生徒の前で話しているにしては詳しすぎるのだが、
(しかも生徒の前で話すには驚くべき、恐るべき内容だ)
まぁ、そういう現実性ということは割り引いて、
時折発せられる生徒の声や、生徒の反応にも応えながら、
淡々と冷静さを維持しながら語って行くようすが痛ましい。

で、この種の作品のおもしろさは、当然のことながら、
同じできごとを経験する複数の心を描いてくれているところだ。


仕事で日常学校現場にいるせいか、学校を舞台にした物語は億劫で、
普段あまり好んで読まないのだが、ぐいぐい読まされてしまった。
この作品にも、いろいろと考えさせられる材料が盛り込まれている。
とりわけ、いじめ問題や少年犯罪について、、、中でも、
自己顕示的犯罪心理とでも呼ぶべきもの、、その背景、、、などなど。


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