TENSEI塵語

2009年03月22日(日) 「ぢ」と「じ」

妻が、dodge ball のdge は「ヂ」を書くのか「ジ」を書くのか、
と言い出したので、「そりゃ『ヂ』に決まってるがね」と言ったら、
辞書には「ドッジボール」しかないと言う。

何で?
子どものころは聞き伝えで「ドッチボール」とさえ呼んでたのに?
サッカーかドッチかどっちにする? なんてセリフもあり得た。
最初に「ドッヂボール」と表記していたのは、
綴りに「d」が絡んでいるからだろう。

そういえば、いつごろからか、
「地面」は「じめん」、「地震」「地神」は「じしん」と
かなをあてるようになっている。
「地」は「ち」だから「ち」に点々じゃないと混乱するじゃないですか、
と思うのだが、いつからか、これが統一表記になっている。

「ぢ」はもう使わない、すべて「じ」に統一、ならわかる。
でも、「ぢ」はまだ使われていて、
「間近」「鼻血」「縮む」などは「じ」を振ってはいけない。
こちらはもちろん、自然に受け入れられるんだけどね。。

統一してしまうのでないのだったら、
本来「ぢ」「ヂ」であるはずのものを「じ」「ジ」にしたのはなぜか、
その必要性は何だったのか、甚だ疑問だ。

ちょっと検索してみたら、goo の質問&回答コーナーで、
こんな説明をしている人がいた。

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まず、国が内閣告示・訓令で定めた「現代仮名遣い」(昭和61年 全文は文化庁のHP=下記URL内にあります。)では、「ぢ」「づ」を使うのは次の二つの場合(例外)に限り、それ以外は原則としてすべて「じ」「ず」を使うことになっています。

例外1)同音の連呼によって生じた「ぢ」「づ」
     例 ちぢむ(縮む) つづく(続く) つづみ(鼓)
例外2)二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」
     例 はなぢ(鼻+血) そこぢから(底+ちから)
       たけづつ(竹+筒) みちづれ(道+連れ)

以上のことから結果的に(現象的に)、
「語頭には『ぢ』『づ』は来ない」
ということになります。

なお、次のような語は「二語の連合」ではあるけれども、「現代語の意識では二語に分解しにくい(元々の言葉を想起しづらい)」という理由で、当初(昭和21年の内閣告示・訓令)は「じ」「ず」と書くことになっていました。
   例「世界中(せかいじゅう)」「稲妻(いなずま)」

しかし、「現代語の意識では二語に分解しにくい」という理由が主観的すぎるなどの批判があってか、昭和61年の内閣告示・訓令では、上記のような語について、
「『じ』『ず』を用いて書くことを本則とし、『せかいぢゅう』『いなづま』のように『ぢ』『づ』を用いて書くこともできる」
と、規範が緩められました。

その規範の緩和がなければ(「中」を「ぢゅう」と読むことが許されなければ)、現象的に次のようなことがいえたのです。
「『ぢ』『づ』は、和語(訓読みの言葉・漢字)に限られ、漢語(音読みの言葉・漢字)には用いられない。」
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ほー、な〜るほど。。
この経緯とか原則とかは、国語の教員なのに知りませんでした。
すみません!f^_^;

でも、ほんとに感心したのは、次。

   「地(じ)」は「地(ち)」の濁音ではない。

ん? ・・・・・・そーいえば!
「地を出す」「地が白い」「地が厚い」「地の物」などを思うと、
「地(ち)」とはまったく別の独立した語に思われる。

だったら、、、地震を「ちしん」と言わず「じしん」と言ったり、
地獄が「じごく」であって「ちごく」ではいけない理由は何か?
という新たな疑問も生じて来るのだが。。。

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さて、ご質問の「地震」の「じ」ですが、これは、上の二つの例外にあてはまりません。しかも、現象的な面(語頭には来ない・音読みである)から見ても、「ぢ」とは読めません。
つまり、もともと「地」には、「ち」「じ」という二つの音読みがあるのです。「省」に「せい」「しょう」という二つの音があるのと同じ事です。(ここらの経緯は、日本における漢字受容の歴史に関係しているのですが、煩雑になるのでここでは触れません。)

「地震」の「地(じ)」は「ち」が濁ったものではないのです。

ただ、ややこしいのは、「地震」をかつて(歴史的仮名遣いで)は「ぢしん」と書いていたということです。しかし、この「ぢ」も「ち」が濁ったことを表しているのではなく、かつては「じ」と「ぢ」の発音が実際に異なっていたことの名残なのです。
今では、全国的に「ぢ」「じ」、「づ」「ず」はそれぞれ同じ音で発音されますが、歴史的仮名遣いの定められた平安時代の共通語では、文字どおり異なった音で読んでいたのです。つまり、その当時「地」は「ぢ」という「じ」とは違った読み方をしていたのです。
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そうだよ、そうだよ、本来は発音が違ってたんだよ。
だから、今でも区別する方がいいと考えてたのに。。。

「ぢ」と「づ」くらい、歴史的仮名遣い残しても、
バチあたらないんじゃないっすか?

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しかし、江戸時代ごろまでには、ごく一部の地域(九州など)を除いて、「ぢ」「じ」、「づ」「ず」は、それぞれ同じ音で発音されるようになりました。つまり、「ぢ」「じ」は発音上区別されなくなったのです。

そのような表記と発音の不一致は、国民の言語教育にとって、大きな障害となります。そこで明治以来、仮名遣いの改革が論じられ続け、ついに戦後間もない昭和21年に、前記のごとく「内閣告示・訓令」が出されて今のような現代仮名遣いが行われるようになり、それが昭和61年に一部修正され、現在に至っているのです。

長くなりましたが、以上が「ぢ」「じ」にまつわる仮名遣いについてのあらましです。

「国語学辞典」(東京堂)「日本文法辞典」(有精堂)「日本文法大辞典」(明治書院)「日本語の歴史」(岩波新書)などを参考にしました。

種類:回答
どんな人:専門家
自信:自信あり

参考URL: http://www.bunka.go.jp/kokugo/frame.asp?tm=20061109114640
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またまた不勉強をいみじく反省させられ、、、
反省ばっかりがてんこ盛りになる人生でございます。


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