TENSEI塵語

2009年03月30日(月) この地方の「おくりびと」

葬儀屋の友人から、湯灌師とか納棺師とかいう語を初めて聞いて、
そういう専門職があることを初めて知って驚いたとき、
湯灌というのは、深めの木の盥に入れてジャブジャブやるのかな?
と想像していた(笑)
映画の「おくりびと」では実際に湯に入れたりせず、拭くだけだった。

きょう納棺に来た男女は大がかりな道具を積んで来た。
浅めの丈の長い、上から見ると長方形の盥(これは見たことがある)。
車の中には発電器やタンクもある。

準備の最中に、よく墓参りなどで使われる木製の桶を渡され、
水を少し入れた上に、風呂の温度くらいのお湯を半分まで入れるよう
指示されて、そのお湯を入れて渡しておいた。

準備が整うと、その浅いバスタブに、入ってしまってるのでなく、
そこにハンモックみたいな原理で浮かせて寝かせられた父がいた。
青いタオルケット状のものが体を覆っている。

桶を右手に持ち、左手に柄杓を持ち、桶の湯をすくって、
柄杓を左に傾けながら足から胸にかけて少しずつかける、、
これをまず家族4人が順々にやった。

それから男性の方が洗髪から始めた。
ひげ剃りも入念に。。。
それまで布団の方の準備をしていた女性の方が、
スポンジに石鹸をつけて足の方から洗い始めた。
頭も体もシャワーで洗い流す、、、シャワーの湯は車から供給される。
排水もちゃんとホースでできるようだ。

大がかりなものだなぁ、、、と感心。。

湯灌が終わると、布団の上に移して仏衣を着せるが、
仏衣はすでに布団の上にセットされていてその上にのせるので、
映画でやっていたようなややこしい手続きは必要ないようだ。
その代わり、美しい所作もなし。。。

しかし、とても丁寧な作業には変わりなし。
顔も、口がかなり閉じて、顔にできていたいくつかのできものも
自然な化粧で隠されて、見違えるようなご遺体に変貌した。
棺に納めるときに、私は薄布団の頭の方を持ったのだが、
今にも目を開けて笑って何か話しかけて来そうな気がした。

棺に納めてから、棺にいろいろな詰め物をしながら、
棺の中の形を整えて、、、それら一連の作業のみごとさに、
あぁ、専門職だなぁ、、、という思いを新たにした。

葬儀屋の友人から話を聞くまでは、
こんな手の込んだ仕事だとは思いもしてなかったのだった。


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