TENSEI塵語

2009年04月28日(火) 「斜陽」

朝日新聞が、4月から日曜に「百年読書会」という企画を始めて、
ナビゲーターの重松清が第1号に選んだのが、太宰の「斜陽」。
読者からの感想文を抜粋して紹介する特集で、
4月4回分の「斜陽」の読書会が先日の日曜に終わった。

まだ読んでなかったので、さっき第2〜4回の新聞を発掘して読んだ。
第1回の日の新聞は資源ゴミ回収に出してしまってもうなかったが、
ここで読むことができた。

なぜまだ読んでなかったかと言うと、
日曜日にのんびり新聞を読む心境でなかったのと、
日曜日の5ページにもわたる読書欄を読むのを避けているからである。
下手に読むと、積ん読のための本が増えすぎてしまう、、(笑)


さて、第1回に紹介されている感想にこんなのがあるのだが、、

「行動する前に悩み、それがすべてだった高校時代の私は、
 太宰のグジグジにかなり共感していた。
 けど、3人の子の母となったいまは違う。
 共感できない。いらいらする」

さもありなん!(笑)
この人と同じ感想を抱いていたわけではないけれど、
そういえば、私も、大学を卒業して以後好んで読み返したのは、
中期の、グジグジ言わない作品群が多かったような気がする。

第4回の締めくくりに引用されているのは
天安門事件の直後に読んだという来日中国人の言葉、、、

「命の危険を感じながらデモやハンストをしていた者としては、
 愛する人の子供を産むことが〈闘争〉だというかず子の戦いは
 あまりにもちっぽけで無力だと思った。
 だが、徐々に、明日を生きるためには
 このちっぽけな戦いしかないと悟った。
 価値観の崩壊から立ち直るには、新たな価値を見つけるしかない。
 その新たな価値となるものは、ありふれた自然と平凡な日々。
 私はかず子のつぶやきを何度も読み返したのだ」

終わりから2つ目の文が「平凡な日々」で終わってるのが
ちょっと解せないのだが(「平凡な日々の中の何か」とか、、?)、
ま、この人に限らず、わりと肯定的に受け止めてる読者も多いなぁ、と
全体を読んでちょっとうれしくなった。


大学時代に「斜陽」についての評論をいくつか読んだのだが、
あまりいい風には書いてくれてなかった。
「四者四様の滅びの姿」とか「絶望的な革命」とか。。
そうかなぁ、、?
それは、あなたたちの、作家のイメージもまぜこぜにした
単なる「感想」か「印象」でしょ?
私は、太宰が結末に向けて描きたかったことにこだわって、
何度も読み返した末、「三者三様の復活物語」と結論した。


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