しかし、私は、みかちゃんの事が、ずっと気になっていた。 心無い人たちのことは、ごまかせても、自分の心だけは、ごまかせなかった。
実際問題として、みかちゃんが、中村さんの事を好きなのは、 傍目で見ていても、あきらかだった。
しかも、みかちゃんは、中村さんと、仕事中はずっと一緒なのだ。
心無い人の言葉にはじめは、「そんな揺さぶりに引っかかるもんか!」と 高をくくっていた私だったが、日がたつにつれ、 ゆっくりと、次第に、私の心は、不安と嫉妬に占領されていった。
仕事が、手に付かなくなる、社内での中村さんが、気になってしかたない。
はたから見ると、ありえないことまで、一人で悪いように空想して、 今の幸せを味わえなくなっていった。
ある意味、心無い人の戦略に引っかかったとも言えるだろう。
仕事の業績も、徐々に落ちていった。 これまでの信頼と、頑張りの評判で、かろうじてそのポジションを守れている。 そんな状態だった。
中村さんとはじめて身体を重ねてから、ほぼ一年が過ぎようとしている時期だった。
お互いの呼び方も月日が、なれなれしくさせた。 中村さんから、あきらちゃんへ・・・りかちゃんから、おまえへ・・・
このまま悩み続けるなら、いっそ思い切って本人に、聞いてみよう。
二人で朝を迎えた休日、ランチを食べた後、思い切って聞いてみた。
「みかちゃんのこと、どう思ってる?変なうわさをだいぶ前に聞いて、 ホントは、ずっと気になってたの。」 「誰かが、何か言ってた?」 「うん」私が頷いたのを見て彼はフッと笑った。
彼は、言い訳に長々と時間をかけない人であった。
「みかちゃんは、オレの事すきだよ けど、なにもないよ。 俺の方にも みかちゃんに特別な感情があったなら、とっくにやってる。そんなチャンスは、今まで、いくらでもあったはずなんだから」そんな言葉で、彼は否定した。
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