彼と、会って、会話を交わすと、悪い空想や嫉妬は、いっぺんに吹き飛んだ。
しかし、社内で仕事中は、やはり、嫉妬や疑いの気持ちが、私を苦しめた。
既婚者の彼が、意図も簡単に私を誘ったことがきっかけで、 私たちの関係は、はじまったのだ。
また、同じ事が、別の人と起こらないとも限らない。
彼の言葉を信じる事さえできなくなっていた。 嫉妬ほど醜い感情は、ないのかもしれない。
そんな私の考えに、薄々気付いてか、ある日彼が、私に言った。 「今度の土曜日、朝からどこかに行こうよ」 「ホントに?!いいの」 「うん、おしゃれなところに泊まろう」
そのころに人気だったある郊外のお洒落スポットへ行こうと彼が提案した。 「約束ね、絶対ね!」「うん、約束だ」 いっぺんに気持ちが晴れた。
そして、それまでの一週間は、その約束のおかげで、 その醜い感情に支配される事もなく、平穏に過ごせた。
ところが、約束の前日 仕事が終わってから、彼は、私に言った。 「ごめん・・・明日、午前中商談が入ったんだ。」 「え〜〜〜!!」
この頃、私は、彼と会うことだけに、全力投球していた。 それ以外のことは、はっきり言って、どうでもよくなっていた。 あの、醜い嫉妬に苛まれるようになってからというもの、 以前のような無邪気で、明るく純粋、仕事熱心な私は、 見る影もなくなっていた。 情けなくて、弱くて、みだらな私へと堕落していた。
それは、まるで、ズルズルと蟻地獄へ落ちていく蟻のようであった。
繰り返すが、嫉妬ほど醜い感情はないのかもしれない。
私を変貌させたのは、彼を放したくない、他の人に触れさせたくない。 そんな感情だったからだ。
「そのかわり、今夜もずっと一緒にいよう。明日、商談が終わってからでも 行けるよ。次の日も休みなんだから。」
私は、その言葉にしぶしぶ納得して、 その夜も、いつものように、彼の肌の感触を思い切り堪能した。
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