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カヴァコスのラヴェル
電車の中で音楽を聞くのは耳に悪いそうだが、いらいらして電車に乗ることはもっと体に悪いと思うので、耳に犠牲になってもらうことにしている。今日はカヴァコスの演奏するラヴェルのソナタ(遺作)に朝から酔いながら出かけた。
カヴァコスがバッハをひいても、うまい人がひいているね、という程度の印象しかないし、別にこの人にブラームスをひいてもらおうとは思わないのだが、エネスコやイザイをひかせるとなんともいえないうまさを感じる。音が重厚で、野太いといってもいいほどだ。しかも断じて荒削りではなく、非常に安定感のある滑らかさで流れていく。音楽をことばに代えて表現することは至難の業だけれど、新しい地平が目の前に拡がって行くような感じでラヴェルのソナタも聴くことが出来た。混んだ車内はほかに集中することがないから、一つ一つの音を楽しむことが出来ていい。
3年か4年前にコンサートで聞いて以来、カヴァコスには入れ込んでいるが、そのときはバッハだったが、それよりもアンコールの超絶技巧に舌を巻いた。以来、ソロリサイタルがないのが残念。N響とやったメンコンは聞き損ねた。どう料理したのか聞いてみたかった。コルンゴルトは聞いたけれど、N響とじゃないほうがよかったんじゃないの、という印象が残った。
一月前、お前はテツラフを追っかけていたじゃないか、といわれそうだが、それはそれ、これはこれ、である。テツラフの魅力とカヴァコスの魅力は全く別のものなので、比較の対象にはならない。うっとりする相手が多いほうが生きていくのは楽しい。今年はこれからハーンもあるし、ムターもある。うっとりの相手がいくら多くても、現実にはそれに倍するクズな人たちとつきあっていかなければならないのだから何も心配することはない。
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