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■ 心だけが そこに残った
小雨の降る 宵闇を縫って走る
私の小さな車のサイドシートに
窮屈そうに 体を納めた理事長との会話。
自分の匂いって分かる?
んー…
自分のは…分かりませんけど
人の匂いには、少し敏感かも しれません。
そういうもんだろうな。
今日なぁ
あの夜と同じ匂いが 君からして
あぁ… あの時の匂いだなぁって
そう思ったんだよ。
ドキリ とします。
そう… この匂いだ。
目を 合わせることができない変わりに
私は言葉を 紡ぎます。
変なことを言いますが
軽く 聞き流してくださいね、
あの日… 朝まで理事長の匂いが
自分の体からしていました。
私は そういうことがあった後に
シャワーを浴びるのが、嫌なんです。
匂いが 消えちゃうから。
移り香の余韻に いつまでも浸っていたいって
そう 思うんですよね。
そういう感性には
今まで触れたことがなかったな…。
変でしょう?
苦笑交じりに返す 言葉。
今日、連れて行きたかったんだ…。
午前中
理事長は単身、車で遠出の出張でした。
一緒に車に乗って 隣に君を座らせて
色々な話をしながら
BGMはマイケル・ブレッガーで
想像したよ
それがどんなに 楽しいものだろうって。
遠い昔に話した
さらにさらに遠い昔 私がテナーサックスを吹いていた
ということを 含んでの選曲であることを
まざまざと 見せ付けられる
そういう 理事長の言葉。
部屋を出る瞬間に理事長
軽く私の腕に 触れられたでしょう?
その瞬間
お互いの心が ぐい と引き合って
その後 体が流れた瞬間も
心だけが そこに残った
そういう感覚が ありました。
そうだな…
最近 沢山、理事長に贈り物 してますよね。
あれって
色々な私の 形のない欲求みたいな想いを
何とかして形に変えて
お傍に 置いて欲しい
そういう想いの表れだったり するんですよ。
目的地が 近づきます。
今度の 泊まりの出張
来年の沖縄の出張
楽しく 過ごせたらいいと
そう、思ってるよ。
私は その言葉以上の意味を
受け取って
私も、楽しみにしています。
笑顔で 答える。
私のサイドシートから
体を下ろす その理事長の右手に
私は思わず 自身の右手を沿わせます。
飲みすぎ 禁物ですよー
ぎゅぅ と握り返された
暖かで 逞しい手のひらの感覚の中に
密やかに私は 心を残します。
2008年11月06日(木)
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