37.2℃の微熱
北端あおい



 『ハイブリッド・チャイルド』

レシアは棺にとりすがりながらブラウン管をコツコツたたいた。そうすれば再び生き返るとでもいうように。

だが奇蹟はおこらなかった。そこにはなにも現れず、宇宙の暗黒の闇が広がっているだけだった。
レシアはふるえながら思った。
さびしい……さびしい……さびしい……この世界は冷たすぎる……冷たい水のようだ、ここに流れる水のようだ、うすく透明で、寒い、寒い、寒い、青ざめた世界。

ある賢者は言っている−−もし最後のページにきたならば……本を閉じなさい、と。

(大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』ハヤカワ文庫、1993)

2005年06月03日(金)
初日 最新 目次 MAIL HOME


My追加