パチンコ屋さんの自動扉が開いたら、 エアコンの冷風と煙草の匂いが、生暑い道に流れ出した。 苦くて乾いていて、裏山の淵の匂いと似てた。
思い出す夏に何時もあたしはひとりで、視界は橙に霞んでる。 毎日たくさん友達と遊んでいた気がするのに、あたしはひとりで庭の中。 何処かとても閉鎖的な気配と、何時の間にか得意になってたひとり遊びの中、屈折してゆく誰かの面影。 裏山には魔女が棲んでいて、あたしも何時か魔女になろうと決めた。 無意識にも居場所を探しはじめてた9歳の夏に、あたしの側には誰も在なくなっていて。 青々と匂い立つ庭も、蝉の耳鳴りも、夕立の唸り声も、あたしには違う側に在る何かだった。 誰かよりも、優しかった。 傷付けず、傷付けられず、息をしているだけの、生きる。 太陽の差す光に含まれて、じめり、と少しだけ夏はあたしを嘗めた。 砂利道に横たわるイメージ。 地球から生まれた草が身体を突き破り、空へと伸びて行く。
焦げた血の匂いを思い出して、明日は今日に繋がり続く、眠りも境にせずに。 一生を昨日と明日に分けて仕舞いたくないのよ。 眠っている間も生きているし、今日の死骸が昨日なわけでもない。
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