カウントシープ
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2006年02月16日(木) 空想の子供達 2

ボクと相方が出会って何年かした頃、ボクは家を建てた。安心して住めるような家。親の決めた職業は皮肉にもボクにある程度のお金を作った。親は今でも、ボクを正しく導いたことに満足しているだろうし、ボクのジレンマは一生消えない。

“いい子じゃなくても、愛してくれただろうか?”

多分愛してくれたのかもしれない。言いつけを守らなかったら、発狂するのじゃないかと思うと(ボクの家系は精神病者だらけだ)、とても勇気が無かったし、低いパーセンテージだって、部分的に愛してくれれば十分だった。

相方が癌になってから、ボク達のシェルターに影が差した。ここにいれば安全だと思っていたのに、内側から攻撃を受けるなんて侵害だった。これは親を裏切っている罰かとさえ思ったし、今でも少々は思っている。

相方はいつも、親の言うことに適当に返事をしていた。
『どうせうるさいからさ、はいはいって言っておけばいいから。』
そういって、沢山の言葉を飲み込む相方のことを、歯がゆく思ったけれど、ボクだって同じことだった。違うのは、ボクの親はボクには何も言わなくなっていて、相方の親は未だに連れ戻そうと必死なことだ。

ボクの親は、あまり子供に興味がないのだろう。ボクの妹の赤ちゃんにも、それほど興味を示さなくて、妹はとても傷ついた。ボク達は母親に関心を持って欲しくて、心に穴が開いた寂しがりだった。相方は、自分が1人の人間としてきちんと認めてもらえることに諦めている人間だった。




あの夜、相方は親に怒る夢を見て、隣でボクは血まみれの子供を抱き上げる夢を見た。一年前に相方は癌になって、それからいろいろなことがあって、本気で親に怒れるようになってきた。相方の親は、心配だ心配だというばかりで、『大丈夫だよ』とは一度も言ってくれなかった。
かわりに、ボク達の友達が、沢山手紙やメールをくれて、みんな『大丈夫だよ』と祈ってくれた。ボクの両親さえもが大丈夫だと励ましに来てくれた。周囲にとても救われたけれど、1番支えて欲しかった存在に大丈夫だと言ってもらえなくて、相方はとても傷ついたのだ。


夢とはいえ、相方は初めて本気で怒った。だからボクはもう、相方の変わりに怒る気持ちはうせた。今まで、お人よしで飲み込まれていく相方にイライラしたりしていた(ボクの問題が其処にはある)のに、今は、相方の母親のことも客観的に考えられるようになりつつある。

ボクの中から生まれたのは、相方の代わりに怒っていたボクであり、相方の心の中にあるはずだった感情だ。ボクは相方の代わりにボクの中にその感情をとどめ続け、今相方の体に戻っていった。正しく怒ることができれば、その先にまた次のプロセスがやってくるだろう。

きちんと扱われなかった時代に、無理やり忘れていたものを取り戻し続けて、人は自分を取り戻していくのだ。


ロビン