【読書記録】豊島ミホ「日傘のお兄さん」 |
ストーリー:その昔。まだ幼稚園に通っていた私と遊んでくれていたのは、日傘を差したお兄さんだった。あれから年月はたち、今の私はどこにいても自分の居場所が見つけられない中学三年生になっていた。もやもやした気持ちが巣くう私の前に、ある日突然現れたのはあの日傘のお兄さんで――。
まずはじめに、私が読んだのは文庫本verです。あとがきで書かれている言葉を引用すると、『三凶のお兄さん』と主人公のなっちゃんのお話。それにしても、三凶って…。笑 お兄さんもお兄さんながら、負けず劣らずなっちゃんも強いキャラクターだと思うのですよね。緊張した雰囲気の中で彼らの地が出ることにより、ほっとさせられたりととてもめりはりがある展開でした。読み進めるうちになっちゃうんの緊張感や不安などがじわじわと伝わってきて、展開が途切れると次はどういうシーンなの!と、もはや夢中で読んでました。とても丁寧な描写の中に潜められた純粋な気持ちがとてもいとしい。
同時収録『あわになる』『すこやかだから』『ハローラジオスター』。この中ではハローラジオスターが好きでした。とてもインパクトがあって、その点においては表題作よりもしっかりストーリーを記憶しています。これだけ派手な方向にはっちゃけた主人公も、豊島さんの作品では珍しいですし、短い作品ですがとてもずっしり残ります。大学生活を彼女みたいに送れたら、それはそれで楽しい…のかな。
あとがきで著者が書いているように、単行本とは違うということも考慮するとそちらも読んでみたいと思います。まさか同タイトルの著書を文庫と単行本で読むことになるとは思わなかった…!NO.55■p294/新潮文庫/07/11
|
2008年10月13日(月)
|
|