【読書記録】「オトナの片思い」 |
11人の作家によるアンソロジー。そもそもオトナの定義はどんなもので、片思いのわけは何かなと思って借りてきたのですが、不倫に年の差・わけありの恋というのがポピュラーで、なんとなく物足りなくも感じました。 +角田光代「わか葉の恋」 今回私が一番しっくりきたのが角田さんの作品。食事処のわか葉で、ちょっとしたことをきっかけに見知った年下の男の子と、主人公は顔を合わすたびに会釈をしあうなかになる。恋愛といえるほどのどきどき感はないけれど、会えるのはとても楽しみで――。 とてもナチュラルで、相手は知らない人間だからこそその距離感が心地よく心に響きました。ほっとする作品。 -------以下、他に気になった作品。 +伊藤たかみ「からし」 もしかしたら既読かもしれませんが、直接的な表現だけではないなぁと思わせてくれた作品。 +山田あかね「やさしい背中」 空気が違う色に感じられた作品。表現がきれいなのかな。 +三崎亜紀「Enak!」 ファンタジー!思いきり現実感が漂う中にどどんっと登場したファンタジー設定に度肝をぬかれました。こういうのもいいと思います。 +大崎知仁「ゆっくりさよなら」 軽い雰囲気がいい波を作っている作品。結婚している相手へ抱く思いという設定に、こういうシチュエーションもあるかなぁと感じました。どこからが片思いなのかは難しいですね。 +佐藤正午「真心」 短編なのにその中にぎゅっとひとつのストーリーが完結しているのは、このアンソロジーでは異色で、さらには第三者の目線というのもあいまって、この発想がすばらしいなと思いました。 NO.56■p247/角川春樹事務所/07/08
|
2008年10月16日(木)
|
|