日々是迷々之記
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と、今日は思った。実家を引き払う準備ができたので、大家さんのところに鍵と賃貸契約書を持ってゆき、色々と話しているうちにそう感じた。
保証金のうち、いくらかが返ってくるのだが、それを2回の分割払いにしてほしいと言われたのだ。大家さんは私が小学生のころから知っている人なので、よほど何か理由があってのことだと思い、快く了解した。すると、大家さんは話し始めた。
母親の住んでいた部屋の真下に妹の同級生の一家が住む家族が住んでいた。お父さんは寿司職人だったように思う。男3人兄弟だったので5人であの2DKに住んでいたのだ。寿司屋を営んでいたお父さんはお店が潰れ、雇われ職人としてアルバイトをして家族を支えていた。
ところが、私が結婚して家を出たころ、奥さんがくも膜下出血で急死、サラ金各社に借金があることが判明。その一家は家賃を溜めて夜逃げ同然でいなくなってしまったようだった。
大家さんにとってそれは金銭的に痛いだろう。だが、大家さんは話を続けた。
「そこの空いた部屋にね、おたくのお母さんが話を持ってきてくれて、是非住みたいって言ってくれはってね…。」
おいおい、何かしたんじゃないやろなーと嫌な予感がする。こういうときに何か話持ってきて、一丁がみするのはうちの母親にありがちな行動だ。
「すぐ住みたいけど、和室を洋室に換えて欲しいと言われてね、替えたんよ。そしたら、やっぱ辞めた、と言いはってなぁ。ごっついお金かけたのに…。おたくのお母さんも、あんな人やとは思わへんかったわって言うてはったけどな…。」
結局うちの母親が紹介した人が変な人で、和室を洋室に改築して損したということのようだった。…。私だったら、先に金をもらっておくけれど、大家さんは基本的に善人なので、そういう考えには及ばなかったのだろう。
そうですか、それはなんぎですね…。と言い私は保証金分割払いを受け入れその場を去った。
サラ金、くも膜下出血で急死、夜逃げ、嘘つき、なんか暗い話ばかりである。私の人生には幸運にもそう言ったキーワードは今のところ関係して来ないが、これから先は分からない。人生いろいろなのだ…。私は自分にそう言い聞かせながら家に帰った。
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