「硝子の月」
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「……何?」 もの凄ぉく嫌そうに、それでも一応は問い掛けてやったのは、少女の精神的余裕が幾らか戻って来ていた為である。 「まさか、君、こいつが『運命の相手なのv』とか言い出すんじゃないだろうな!?」 そういう意味では感謝すべき少年を指差して、シオンは(一部を非常にかわいらしく)ルウファに問うた。 「そんな言い方はしないけど」 肯定はしないが否定もしない。食堂の空気が野次馬根性でどよめく。 「俺は認めない! 絶対に認めない!」 「別にあんたに認めてもらうことじゃないし」 「るぅぅふぁぁぁぁぁ」 少女はふいとそっぽを向く。攻撃に出ないだけ優しいということなど周囲の人間が知るはずもない。 「お前の話だろ」 ほとんど我関せずといったスタイルのまま、グレンは面白そうにティオに囁く。 「こいつ等の話だろ」 その言葉で我に返り、少年はルリハヤブサと食事を再開する。冷めたスープならルリハヤブサにでも飲める。 「またまた。愛の告白されてんのはお前だろうが」 「今ののどこが『愛の告白』なんだよ」 すっかり会話が二分されたところに、店員が申し訳なさそうにと言うよりは寧ろ怯えたように口を挟んだ。 「あのう……お料理はどちらに……」 「こっち」 「もう一組同じのを」 喧嘩にもならない一方的な懇願をやめて、青年はいつの間にかテーブルに着いていた。
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