「硝子の月」
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2001年12月29日(土) |
<成り行き> 瀬生曲 |
「何事!?」 振り返る三人の気持ちを代表してルウファが言葉を紡いだ。 「かぁわいいぃぃぃぃぃっっvvv」 「「「……は?」」」 ハートマーク飛ばしまくりで抱き上げた猫に頬擦りをするいい年こいた男にその場の時が止まった。 「うわぁぁぁぁ、かーわいいねぇ、お前v このつぶらな瞳、綺麗な毛並み。肉球触ってもいい? むにゅ。ああーかわいいよぉぉぉぉvvvvv」 「「「…………」」」 一同言葉も無い。 「……おい」 「何よ」 「ああいう奴か」 「猫マニアとは知らなかったわ」 「新たな一面を発見したな」 「したくもなかったけどね」 小声でそんな会話を交わす。この時『こいつこのまま置いて行こうか』という考えが湧き起こったのは一人ではなかった。密やかに交わされる視線の会話(。 「待てよ!」 (((勘のいい奴))) 静かにその場を去ろうとしたところを呼び止められて嫌々振り返る。 「お前等、こんなにかわいい仔猫ちゃん達を見て何とも思わないのか?」 (((そっちかい))) 心の中で総ツッコミ。この時ほど三人の心が一つになることはこれから先そうそう無いかもしれないという同調(っぷりである。 「俺(ゃあ別に猫好きじゃねぇしなぁ。食ったら祟りそうだし」 「何!?」 「ここら辺じゃ売れないわよね。どっかじゃ楽器に猫の皮使うらしいけど」 「そういうことじゃないよルウファッ!」 シュールな二人の同意を得ることを諦めたのか、シオンはティオに縋(る様な視線を投げ掛ける。抱いたままの猫のつぶらな瞳とのダブル攻撃である。 少年はしげしげと猫を見詰めて言った。 「きったねぇ猫」 「ほほう」 いつの間にか彼の背後には老婆が立っていた。
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