「硝子の月」
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「そうじゃそうじゃ。見る目があるのう小僧。 確かにわしの猫は『びゅーてぃほー』なのじゃが、この年では洗うのが大変でのう。最近ちょっと風呂をサボっておったわ」 「……は?」 唐突といえば唐突な老婆の言葉に、ティオはやや引きながら疑問符を返す。しかし老婆はそれに気付いた風でもなくうんうんと頷いている。 「というわけで、小僧」 「……え?」 「わしの猫の風呂を頼む。なに、ほんの15匹程度じゃ、軽い軽い」 「な――っ……」 冗談ではない。一人で納得する老婆に、ティオが慌てて反論しようとした瞬間。
「了解しましたお婆様っv」 横からシオンがしゃしゃり出て、ぶんぶんと手を振りながら良い子のお返事をかました。
「あっ、こら馬鹿――……」 「ふふ、ふふふふふっv 猫天国! さぁ頑張ろうねルウファ、可愛い猫たちのために!」 「ちょっ、なんであたしまで――……」 「おお、やってくれるか。うむうむ、ちょっと言ってみただけだったのじゃが、ノリのいい若者じゃのう」 「こら待て婆さん、俺たちはなぁ――」 「ほっほっほ、今日はいい日じゃなぁ」 「ああもうっ、何が何だか!?」
――何と言うか、そういうことで。 こういうことであった。
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