「硝子の月」
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2001年12月31日(月) <成り行き> 朔也

「そうじゃそうじゃ。見る目があるのう小僧。
 確かにわしの猫は『びゅーてぃほー』なのじゃが、この年では洗うのが大変でのう。最近ちょっと風呂をサボっておったわ」
「……は?」
 唐突といえば唐突な老婆の言葉に、ティオはやや引きながら疑問符を返す。しかし老婆はそれに気付いた風でもなくうんうんと頷いている。
「というわけで、小僧」
「……え?」
「わしの猫の風呂を頼む。なに、ほんの15匹程度じゃ、軽い軽い」
「な――っ……」
 冗談ではない。一人で納得する老婆に、ティオが慌てて反論しようとした瞬間。

「了解しましたお婆様っv」
 横からシオンがしゃしゃり出て、ぶんぶんと手を振りながら良い子のお返事をかました。

「あっ、こら馬鹿――……」
「ふふ、ふふふふふっv 猫天国!
 さぁ頑張ろうねルウファ、可愛い猫たちのために!」
「ちょっ、なんであたしまで――……」
「おお、やってくれるか。うむうむ、ちょっと言ってみただけだったのじゃが、ノリのいい若者じゃのう」
「こら待て婆さん、俺たちはなぁ――」
「ほっほっほ、今日はいい日じゃなぁ」
「ああもうっ、何が何だか!?」

 ――何と言うか、そういうことで。
 こういうことであった。


紗月 護 |MAILHomePage

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