「硝子の月」
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2002年01月04日(金) <成り行き> 瀬生曲

「振り返ってみるに……」
 いつの間にかよじ登っていた仔猫を頭に乗せたまま、グレンは深々と溜息をついた。その手はちゃんと盥の中の別の猫を洗っている。
「俺達まで猫を洗う必要はないんじゃないのか?」
 もっともである。
「何を言っているんだ、こんなにかわいい…」
「「(お前/あんた)は黙って(ろ/て)」」
「二人で息ぴったりなんてずる…」
「大丈夫よ」
 同じ台詞は繰り返さずにルウファはきっぱりと言い放つ。
「ちゃんと報酬は貰えるように話はつけてきたから」
「流石しっかり者だな」
「俺の妻たるにふさわし…」
   ビュッ
 シオンの言葉が終わらないうちに少女の手首が鋭いスナップを利かせて振られる。その指先から泡立つ石鹸水が飛んだ。
「ぎゃあぁああっ! 目が! 目がぁぁぁああああっ!!」


紗月 護 |MAILHomePage

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