ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ

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2002年03月22日(金) 愛についてパートツー
わたしは丹羽が、大きらいだった。
不細工、という言葉さえためらわれるような顔。背中はぐにゃりとまがり常に体をゆすっていた。
努力はしないくせに、一度好きになった相手への執着はすさまじく、いつだったか、丹羽に毎日追い掛け回され、疲れきったとある女の子が、彼女のすむマンションに帰ると、丹羽が管理人の老人とともにホールで話していた。そんな性格の丹羽と何故わたしはいつも一緒にいたのか。それは、話したくもなくないから割愛する。一言で言えば、「親戚」。それもずいぶんと入り組んだ。
「サナちゃん」、と、丹羽はわたしを呼んだ。丹羽はNの発音が上手にできず、「サダちゃん」、といっているように聞こえた。

今日の昼頃、丹羽から電話があった。
「サナちゃん、サナちゃん、(サダちゃん、とやはり言っているように聞こえた)今日の夜うちにきて。お、お、お、お願い」
わたしは丹羽のうちに行った。すぐに帰れるように言い訳は用意しておいた。
それが、どうしたのだろう。丹羽はいない。
わたしは丹羽のうちで一人で一晩過ごした。
丹羽の布団など使う気になれず、床で寝た。
次の朝、起きても、丹羽はいなかった。
ポケットの中の、携帯が震える。液晶の画面には、「丹羽祥平」の文字。丹羽だ。
「も、もしもし。サナちゃん?あのさ、ごめんね。僕、本当、ごめん。ごめ、ごめ、ごめん」
相変わらずの喋り方。
「それでね、僕、しばらく、帰れないから、あの、鍵、しめなくていいから、僕のうちは、ほっといて、良いよ」
永久不変の真理を見つけ出したように丹羽は言った。
「僕、死にたい、けど、死なないから。大丈夫だから、心配、しないで」
そういうと、丹羽は電話を一方的に切った。
丹羽が死ぬ?信じられない。いつだって焦点の合わないマンガのような眼つきでにたにたわらい、呂律の回らない口ぶりで、わけのわからないことばかり言っていた丹羽が。

わたしは丹羽を見捨てたいのに、それができないでいる。
どうして。



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