lucky seventh
DiaryINDEX|past|will
なにもできなかった。
ただ、それだけ。
---------
神の試作品。 人は彼をそう呼んだ。 だけど、彼は知っている。 その影で、彼のことを出来損ないだと失敗作だと言われているのを…
白く、美しい衣服をまとった女性がゆったりと回廊を歩いていた。 歩くたびに、淡いベージュ色の細やかに結われた髪が左右にゆれる。 温かな陽光の中でそれはキラキラと光をはじき、光の尾を描いていた。 すれ違う、みながみなそんな女性の美しさに足をとめて、見愡れている。 しかし、女性はそれを気にも止めることなく、ただただった1人しか 目に入っていなかった。
「エレイソン」
女性の落ち着いた、心地よいアルトの声が聞こえた。
「エルレイン」 どうかしたのか?
呼び声に、庭園に出されて簡素な机と長椅子にこしかけて 本に目を落としていた男性が顔をあげる。 その音質に酷似したテノールの声が、女性に優しく響いて消える。 俯いて影になっていた男性に日の光がかかる、女性と同じように白を基調とした美しい騎士風の衣服がそれをうけ輝いていた。
「エルレイン…エル?」
呼んだまま、返事を返さない女性に男性は優しく、親し気に呼び返す。 それに女性は、あまり変わることのない表情を少しだけくずした。
2人の間が風をすり抜ける。 揺れる髪も気にすることなく、男性は女性を見つめる。 見つめあう2人。 遺伝的に酷似したような二つの容姿、そこには性別の差違はあるものの 見るもの不思議と同種の神々しさ感じさせた。
2人は兄妹だった。 ただしくは同じ神によって造られた神子。 しかし、先に造られた兄であるエレイソンは出来損ない、所謂失敗作で 後に造られた妹であるエルレイン、成功作であった。 神の造りし『失敗作』と『成功作』それが2人であった。
「エレイソン」
けれど、女性である妹にはそんなことは関係ない。
「エリィ、となりいいですか?」
妹は男性を、兄を心のソコから愛していた。 何よりも誰よりも、兄が自分を愛し、支えられていることを知っていたから、
「あぁ」
いつでも応えてくれたから。 兄は、兄であると同時に妹にとってもっとも最愛の人でもあったのだ。
ナナナ
|