lucky seventh
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2004年05月06日(木) |
ふりほどいた手、いえなかった約束2(無色シリーズ) |
振り返っても、 君を泣かした事実だけ、
私の歩いた道には、 君の涙であふれていた。
・ふりほどいた手、いえなかった約束・
「それは後悔?」
闇は笑った。 それははたから見たら、炎の鬣を持つ男に対しての嘲りに見えた。 しかし、ソレは嫌になるほど自覚していた。 そう、それは自分への自嘲、
離してしまった手に対しての、 帰りたいと思ってしまった思いへの、
限り無い衝動だった。
男は何も答えなかった。
「みんなみんな泣いてるよ」
そらす事なく、互いに見つめ合うだけが精一杯で、
「生きてるものだけが、みんなみんな泣いてる」
ただ、見ることしかできなかった。 けれど、ソレの目には何も宿らない。 あるのは思い出の中にある愛しい召喚主だけ。
「だって死者は泣けない、だろ?」
歌うようにソレは言った。
「泣くのはいつだって、生者だけ。」
だから愚かなんだと、ソレは言った。
男はソレに刃を向けた。 ソレはただそこに居るだけだった。
男の目にあるのは焦燥と困惑を混ぜたもの、
「逃げないのか?」
男は不思議そうに言った。 その言葉は、
「逃げないの?」
その言葉は、かなしい程愚かに優しい少年と同じだった。
「逃げないのカ?」
繰り返すように なぞるように発した言葉は、まるで鏡のよう。
それは否応なく、自分の姿をうつし向かい合わせる。
闇は言う。
「何故?」
闇は言った。
「逃げて欲しいのか?」
何一つ、同じものは存在しないのに、 泣きそうに歪んだ表情に、闇は悲しくなった。
毛を逆立てている姿は同じ。
少年はいつだって、ソレの言葉に傷付いていた。 そして男も、同じように傷付いていた。
踏み込まないで、 心の中に、 心の闇に、
闇はまた繰り返すのかと悲しくなる。 ソレはまだ終わりがないのかと哀しなった。
ナナナ
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