lucky seventh
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2004年06月07日(月) ゆめに思いを、はせた。 (黒衣の花嫁)

あの人はいつも黒い衣服を身にまとっていた。

おれが生まれたすでにその時、あの人は喪に服していたんだ。












第一章 ゆめに思いを、はせた。














長いウィッグの黒髪が一歩歩くたびにさらさらとゆれる。
男にしては長めのまつげにふちどられた宝石のような瞳は、
空をあらわすセルリアンブルー。
ダークブルーのスーツは紛れもない『青』の証、そして今日はいつもと違い
その黒のブーツは通所の物に比べてヒールがあった。

「隊長、お疲れさんです♪」

貸し与えられた部屋のドアをあけれると、そこにはすでに先客が来ていた。
黄葉した銀杏のような髪と新緑の瞳をもった彼の部下は楽しそうに言った。

「いやぁ〜相も変わらず見事な化けっぷりですね♪」

「化けたなんて失礼だね…」

脱力したように隊長と呼ばれた少年は、自分の部下を見やった。
楽しそうにソファーで寝転ぶさまは思わず給料ドロボーと叫びたくなる態度で、

「頼んだこと、ちゃんとやっといてくれた?」

念をおしたくもなる。
急ぎの用事だからとつい先日頼んだ仕事は、この部下とその相方に一任していた。
さる歌姫の警護のための特注のプログラミング、彼がわざわざこんな格好をして
ここに訪れたのはそんな理由からだった。

「勿の論ですとも。ちゃーんとチルチルとミチルに組み込んでおきました!」

自慢げに笑う部下の肩に、チルチルとミチルと付けられた手の平サイズの
美しい青い翼をもつ鳥型の人工知能ロボットが大人しく鎮座していた。

「チルチル、ミチル」

少年がそっと手を上げながら呼ぶと、チルチルはその上げられてた手に
ミチルは肩にそっと飛んでおりた。

「うん、異常はないみたいだね」

嬉しそうに、小鳥を見る少年の瞳はとても満足そうだった。
そんな態度に腑に落ちないというように、彼の部下は彼を見た。

「隊長、一体なにをそんなに警戒しているんですか?」

たかだか護衛、しかもそれは戦闘とは一切無縁であるはずの民間船で、
確かにそこにはお偉いさんの娘である歌姫が乗るのだが、
それにしては少し警戒し過ぎではないのだろうか?

そんな部下の推測に、彼は不敵に言った。

「荒れるよ」

それは確信だった。
何かを待ち望むかのように、唇にひかれた真っ赤なルージュが弧をえがいた。

彼は笑っていた。


そんな自分の上司の態度の迫りくる嵐の予感に、

(荒れそうだ…)

部下の脳裏には荒れ狂う仲間たちの鬼の形相が浮かんでは消えた。


「って事で留守番よろしく!」






ナナナ

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