lucky seventh
DiaryINDEX|past|will
2004年08月22日(日) |
届かない、指のさき。 |
「のばしても、届かないのね。」
そう言って、彼女はかなしそうに笑った。
:届かない、指のさき。
染めても、染まることのナイ真っ黒な髪、冷たく燃えるような青い瞳は、 見たこともない遠い祖先のものだと、祖母は言った。
お前は生まれ変わりなのかもしれない。
なにげなく、そう言われた台詞に私は笑うことしか出来なかった。 だったら、今ここにいる私は誰なの? 回りのみんなも現れた面影を喜び、私を見てはくれなかった。
「おねえちゃま」
あの子が生まれるまで、
「ジェルソミーナ」
あの人に出会うまで、
私はそれがたまらなく悲しかったのです。
「ジェルソミーナ」
まるで、双子のように似ている2人は寄り添うように、 月夜の中、天高い塔の上の窓辺に座っていた。
「なぁに、リドル?」
リドルと呼ばれた少年は、美しい黒髪の少女を後ろから抱きかかえるように座り、 優しく髪を撫でる。 その紅玉色の瞳は、まるで流れる血の色のように熱を持っている。 それにジェルソミーナはくすぐったそうに笑う。 氷のような凍える青玉色の瞳が、冷たく熱を持つ。
「ジェルソミーナ」
愛しく囁かれる甘い声に、ジェルソミーナはリドルの膝上に座る身体を半天し、 彼に抱き着くように座り、その片口に甘えるように顔を埋めた。 リドルの黒い、少し癖っ気のある髪が顔にかかるのも気にせずに。
「ジェルソミーナ」
リドルはただ名前を呼ぶだけで何も言わない。 それがジェルソミーナには嬉しかった。 その労るような、包み込むような声に、ジェルソミーナの目蓋が落ちる。
「眠ってもいいよ。」
目を眠そうにこするジェルソミーナにリドルは言った。
「ちゃんとベットに連れていくからさ。」
クスクスと肩を震わせて笑うリドルの振動に、さらに眠気が誘われた。
「おやすみ、ジェルソミーナ」
リドルの声を最後に、ジェルソミーナの意識は落ちていった。
月だけが、優しく微笑むようにリドルを見ていた。
ナナナ
|