lucky seventh
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2004年11月10日(水) ロボットダンス 〜人形芝居〜

それは夢 遠い遠い過去の 夢…









「ほら、ちゃんと謝りなよ。」

少しくせっ毛の髪の少年がボートの真ん中で言った。
その、対岸にははねっ毛の少年が仏頂面で縁に座っている。

「…………。」

ハァ

無言を決め込む少年に、エリ−エルはため息をつく。
それにイルゼールは、むっとしたようにエリーエルの方を見た。
否、エリーエルの後ろにいる先ほどから一言も言葉を発しない
元凶を睨んでいた。

ハァ…

それにエリーエルはさらに深いため息をついたのだった。



イルゼールとフーリアン
イルゼールはフーリアンを嫌っていた。
出来損ないのフーリアン、
死に対する恐怖への欠乏をファクターで言い渡されたフーリアンは
もう人として使い物にならなかった。
数日後、フーリアンは人形として再起動させられる。
それはまだにイルゼールの願った結果そのまもだった。
けれど、
だけど、
イルゼールの心の中は晴れない。
むしろ、逆に怒りだけが湧いてくる。

何に対して?

分けの分からない感情にイルゼールは苛立って、
いつも以上にフーリアンに強くあたってしまう。

クソッ!!
何で何だ!??

エリーエルはそんなイルゼールに苦く笑った。
イルゼールも自分も人として起動させられたが、所詮人形は人形。
設定された感情型しか表現ができない。
怒、楽のイルゼール
素直で自分にとても正直で、その反面とても感情型に引きづられやすく
まるで制御を知らない、否できない子供のようだった。
喜、哀の自分とは全然違う。
エリーエルにはそれがよく分かっていた。
だから、今のイルゼールが何故こんなにも頑ななのかも察しがついていた。

それは子供と同じ、
自分の物が取られることへの純粋な怒り。

エリーエルは知っている。
本当はイルゼールが言葉で言うほどフーリアンのことが嫌いではない事を、
アカデミーに中途入学してきたてのフーリアンの事を
何かと目にかけて気にしていたのはイルゼールだったという事を。
だけど、イルゼールにはそれが分からない。
イルゼールのプログラムに書き込まれた手順ではその解答を見い出す事が
できないから、そして、それは自分も同じだった。

エリーエルの後ろで、ボートの端っこで膝を抱えて座るフーリアン。
再起動、それは今までの記憶を保存して起こす事で
目覚めたフーリアンは記憶があるが、……ただそれだけ。
余計な感情は湧かない。
何も思わない。
何も思う必要がなくなる。
それは=人形と同じ。

それは死と同義語。
だけど、死に対する恐怖への欠乏をファクターで言い渡された
フーリアンに浮かぶ感情は存在しない。
人でありながら、人形に近いフーリアンにドクター達は
それはフーリアンが殺されそうになったからだと言った。
あまりの恐怖に心が壊れたのだと……
それが事実なのかは今となっては分からない。

「イルゼール」

今はただ

「ほら、ちゃんと謝りなよ。」


もう少しだけ、人として過ごそうよ…




いつまでも、この夢のなかで… 永遠に永遠に……


ナナナ

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