ゼロの視点
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2002年12月13日(金) カップル達の逸話 PART3

 毎年、この季節になると思い出すカップルがいる。15年間籍をいれず、同棲生活を送ってきた二人、♂R(53歳)、♀P(42歳)。

 二人とも、知り合う前にはそれぞれ別の人と結婚して子供を設けていて、その後離婚。その後、人生のパートナーとして最高の人に知り合い、そのまま過ごしてきて既に15年が経っていたという感じだったのだと思う。Rが不動産屋を経営して、彼女のPがそれを補佐するというスタイルで働いていた。

 1999年春から私達は、購入目的でアパルトマンを探し出していた。当時私はほとんどフランス語も喋れなかった。日中仕事のため物件を巡れない夫に代わって、私はビデオカメラ持参で物件めぐりをして、部屋を撮影すると同時にセールスマンにカメラに向かってセールストークをしてもらう、という荒業をしていたのもこの頃のこと。それを、あとで夫に見せればいいだけの名案だった。

 しかし、数ある不動産屋、かなり胡散臭いものもあったし、値段が異様に高く設置されたものも多々あり、数をこなしていくうちに、どんどん不審になっていく私達。そんな時にたまたま、別の機会で知り合ったのが、このR&Pカップルだった。

 Rは惜しげもなく、本当に親切にたくさんの有益なアドヴァイスを私達に与えてくれた。その後結局、私達は不動産屋を通さずに、個人売買で現在のアパルトマンを購入することになるのだが、その契約時も、すべて書類に目を通してくれ物凄くいい条件で物件を手に入れるための援助をしてくれたのだ。

 契約を済ませたのが1999年の11月の中ごろ。その直後にあったパーティでまたこのカップルと一緒になった。彼Rは、相当仕事で忙しいらしく、その気晴らしに12月になったら、メキシコに彼女のPを連れて行き、翌年には結婚をすると嬉しそうに語ってくれた。
 
 と同時に、仕事上のストレス等の話もたくさんしていた。その当時はアパルトマン探しで相当フランス語を理解せざるを得なかったおかげで、人が語っていることはフランス語でだいぶ理解可能になってきていたが、とはいえそれでもなかなか自分の思うように喋れないというジレンマを抱えていた私。なぜ、彼が私相手に、ここまで深い自分の話をしてくるのかわからない・・・、というのが正直な感想だった。でも、あまりにも切羽詰まったように喋る彼を見ていて、ちゃんと話を出来るだけ聞いてあげようと思ったことも確かだった。

 そして月日は経ち、とある昼下がり、ふと突然この夫婦のことがアタマをよぎった。

「今頃は彼らは、メキシコで楽しんでいるのかな?。」と・・・・・。

 その直後に、日本に住む私の母親から電話がかかってきて、もうすぐパーティーなども多くなるから、実家においてきたスーツを送ってくれと頼んだ。

 そして、一週間後・・・・・・、土曜日の午後だった。メキシコで楽しんでいるはずの彼女Pからの電話だ。

「Rがメキシコで死んでしまったの・・・、葬儀を月曜日にするから来てください」という知らせだった!!。

 ストレスを発散するために出かけた、メキシコのディスコでPと踊っていた突然倒れ、そのまま帰らぬ人となったR。

 後でわかった事だが、私のアタマにふと彼らのことがよぎった時間に、彼が亡くなっていたそうである。そして、このPからの衝撃的な電話の数時間後、実家の母に頼んでおいたスーツが日本から届いた・・・・。色は黒・・・・。彼の葬式のために頼んだとしか思えないほど、薄気味悪いタイミングだった。

 葬式は、本当に救いようのないほど悲しいものだった。涙などでない。ただただ彼女Pの悲痛な叫びが、私の神経を麻痺させたのかもしれない。とあるパリ郊外の墓地に埋葬される彼Rの棺に、どこまでも放心状態でくっついて歩くP。そのまま棺と供に、深い穴のなかにPが一緒に落ちていきそうな感じだった。

 翌月には、結婚するはずだった彼ら。しかし、Rの死によって、Pの立場が完全に危うくなってしまった。何も法的に守られてないのだ。結婚後一緒に住む筈だった家も、Rの名義、一緒に働いていた不動産屋もRの名義・・・。これが結婚後だったら全然違っていたのかもしれないが、Rには成人した子供たちがいる。15年間一緒に作り上げてきたものが、書類関係をしっかりやっておかなかったことにより、Pに残らず、子供達に残る可能性が強くなってしまったらしい。なんという話だ・・・・。

 その後何度か、名義を巡ってのとんでもないRの子供側からの仕打ちの噂を耳にした。本当か否かはわからないが、ふと彼女に電話してみても、もうその番号は使用されていない。ゆえに今、彼女Pがどのような暮らしをしているかサッパリわからないが、幸せな日々を取り戻していてくれることを祈るばかりだ・・・・・・・・・・・・。

 


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