さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年12月11日(水) |
にゃん氏物語 夕顔17 |
光にゃん氏訳 源氏物語 夕顔17
源氏は心配ばかりして 胸が悲しみでいっぱいのまま帰途に着いた 露の多い帰り道に濃い朝霧が立ち このままあの世に行くよう寂しい 気持ちになる 某院にいた時と同じように夕顔が寝ていた事 あの時 上に掛けた源氏の紅の単衣に まだ巻かれていたこと などを思って 一体 あの人と自分はどのような前世の因縁があったのかと帰り道を 進みながら源氏は思った 馬も しっかりと乗れそうにないので 惟光が介添えして帰るが 加茂川の土手に来た時に源氏は落馬した
『家の中でない こんな所で自分は死ぬ運命だ 二条の院までは 到底 行けないだろう』と言った 惟光の頭も混乱状態である 自分がしっかりしていれば 源氏に言われても 軽はずみに連れ出す 事はしなかったのにと思い悲しむ 川の水で手を洗い 清水の観音を 拝みながら どうすればいいか悩み苦しんだ 源氏も無理矢理自分を 励まし 心の中で御仏を念じ 惟光の励ましも借り 二条の院に着く
毎晩 不規則な時間に 出入りしているので 女房たちが 「見苦しいです 最近はいつもより お忍びしていて 昨日は大変 具合が悪かったのに それでも また出かけるから困ったものです」 こんなふうに 溜息をついていた
源氏が自分で思っていたように そのまま床について わずらう 重い容体が二〜三日続いた後は すっかり衰弱してしまった 源氏の病気を聞いて 帝も非常に心配して あちこちで絶え間なく 祈祷が 特別な祭り 祓い 修法で行われた 何にでも優れている源氏みたいな人は 短命かもしれないと思い 帝である人が病気に感心を持つようにもなった
病床についていながらも 源氏は右近を二条の院に呼んで 部屋も 近くに与えて 女房の一人として手元で使うようにした 惟光は源氏の病気が重い事に 気も動転するほど心配しながらも その気持ちを押さえて 知らない女房たちの中に入った右近が頼り なさそうであるのに 同情して よく世話をした 源氏の少し体調がいいと思われる時は 右近を呼び出して居間の用 などをさせて 右近はしだいに二条の院の生活に馴れて来た 濃い色の喪服を着た右近は 容貌は良くもないが 見苦しくもない 若い女房の一人 として見られていた
『運命を夕顔に捧げた短い夫婦の縁なので 片割れの私も長くない のであろう 長く頼りにしてきた夕顔に別れた右近がどんなに心細い だろうかと 私に命があれば 彼女の代わりに世話したいと思ったが 私も彼女の後を追うみたいだから 右近には気の毒だね』と他人に 聞えない声で言って 弱々しく泣く源氏を見て 右近は夕顔に別れた 悲しみの他に 源氏に もしそんなことがあれば悲しいと思った 二条の院の皆は 誰も冷静でいられなく源氏の病気を悲しんでいる
さくら猫にゃん
今日のはどう?
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