さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年12月17日(火) |
にゃん氏物語 若紫01(わかむらさき) |
光にゃん氏訳 源氏物語 若紫01
源氏は瘧病(わらわやみ:おこり マラリア熱病)にかかっていた いろいろおまじないや僧の祈りも受けていたが効き目無く 発作が何度も 起きたので ある人が「北山の某寺にとても上手な修験僧がいます 去年夏この病気が流行った時 まじないも効き目が無く困っていた人が 多く救われました 病気がこじれると治りにくくなるので早く試した方が いいでしょう」このように言い勧めたので修験僧を山から招こうとしたが 「老体になっていて岩窟を一歩出ることも難しい」が僧の返事だった
『それでは仕方が無い そっと忍びで行ってみよう』源氏は親しい家司 四 五人だけ伴い夜明けに出かけた 郊外にある遠い山だ 三月三十日 京の桜は散っていたが 山の桜は花盛りで 道を進むと 霞にも都の霞に 無い美がある 窮屈な境遇の源氏は山歩きの経験が無く 何でも珍しく 面白く思った
寺は心に深く感じるように清らかで高い峰の岩谷の中に聖人は入っている 源氏は自分が誰か言わず服装など粗末にしてきていたが迎えた僧は言う 「勿体無いことです 先日お呼びになった方でしょう 私はこの世の事は 考えないものですから修験の方法も忘れているのに どうしてわざわざ お越しになったのでしょう」驚きながらもにこやかに源氏を見ていた 非常に偉い僧なのです 源氏を形どったものを作り瘧病をそれに移す 祈祷などをしているうちに日が高くなった
源氏は寺を出て少し散歩した 辺りを眺めると高い場所なので そこらの 多くの僧坊(寺院に付属の日常生活の建物)が見渡せた 螺旋状の道の この峰のすぐ下に 他の僧坊と同じ小柴垣だがひときわ目立って綺麗に 張りめぐらされ 座敷風の建物と廊などが優美に組み立てられ庭の作り なども凝ったものがあった『あれは誰が住んでいるのだ』と源氏が問う
「これが某僧都が もう二年引きこもっている所です」とお供が言う 『そうか あの僧都の家なんだ 知られたら困るな粗末な格好で来て』 源氏は言った 美しい侍童などがたくさん庭に出て仏の閼伽棚に水や花を 供えているのもよく見えた 「あそこに女がいます 僧都が隠し妻を置く ことはないでしょうが 何者でしょう」こんなことを従者が言った 崖を 少し下りて覗く者もいる 美しい女の子や若い女房や童女が見えると言う
源氏は寺へ帰り 仏の勤めをしながら昼になるにつれて発作が起こるのを 心配していた 「気を紛らし病気を気にしないのが一番です」と言われ 後ろの方の山に出て 京の方角を眺めた ずっと遠くまで霞んで山に近い 木立は煙って見える『絵みたいだ こんな所に住めば人の汚い感情など 起こらないだろう』と源氏は言う 「この山はまだ平凡なほうです 地方の海岸や山の景色などを見れば 自然から学ぶものがあり絵も上達するでしょう 富士山 その他何々山」 と話す者もいた また西の方の国々の美しい風景を言い 津々浦々の名を 並べる者もいて 誰もが病から気を紛らわせようと努力しているのです
さくら猫にゃん
今日のはどう?
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