さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年12月22日(日) |
にゃん氏物語 若紫06 |
光にゃん氏訳 源氏物語 若紫06
「それは非常に嬉しいのですが まだ全然 幼稚です 仮の話でも そばに置くのは難しいことです でも女は夫のよい指導で一人前になる ものだから 必ずしも早過ぎるという話でもないです 私は何とも言う 事ができません 子供の祖母と相談してお返事しましょう」 このように きちんと話す人が厳かな人なので 若い源氏は恥ずかしく 望んでいることをうまく言えなかった 「阿弥陀様のいるお堂で用事がある時間です 初夜のお勤めをまだ していません 済ませてきます」と言い 僧都はお堂のほうに行った
病後の源氏は気分もすぐれない 雨が少し降り 冷ややかな風が吹き 滝の音も強くなったように聞えてくる そして少し眠そうな読経の声が 途切れ途切れに響く こんな山の夜は どんな人にも物悲しく寂しいが それにまして源氏は いろいろ思い悩み眠る事ができない 初夜の時と 言っていたが 実際はそれより夜が更けていた 奥の方の室の人たちも 起きている様子がよく解かる 静かに遠慮していても 数珠が脇息に 触れて鳴る音が聞え 女の立ち振る舞いの 衣擦れの音も懐かしく 微かに聞える 上品でよい感じである
源氏はすぐ隣の室であるから 座敷の奥に立ててある屏風の合わせ目を 少し引き開けて 人を呼ぶのに扇を打ち鳴らした 相手は意外と思うが 聞えないふりもできず女が座ったままにじり寄る 襖障子から 少し離れて「おかしいな 聞き違えかな」と言うのを聞いて源氏は 『仏の導く道は暗いところでも間違えるはずがありません』と言う 声が若々しく品がいいので 女は答えるのも気がひけたが 「どなたへの お導きでしょうか 何もわかりませんが」と言った 『突然 ものを言われて失礼と思われるでしょうが
初草の若葉の上を見つるより旅寝の袖も露ぞ乾かぬ (初草のような若々しい少女を見てからは 旅寝の袖は恋しさの涙で 濡れて乾きません)と言ってもらえませんか』と源氏は言う 「そのような言葉を頂いて分かる方のいない様子はご存知でしょうが どなた宛てですか」と言う 『自然に そう言わせる訳があり言っているのだと思ってください』 源氏がこう言うので 女房は奥に行ってそう言った
まあ艶な方らしい華やいだご挨拶で 姫君が年頃と勘違いしているのか それにしても若草にたとえた言葉をどうして知っているのだろうと思い 尼君は少し不安である しかし返歌が遅くなるのは失礼だと思って
「枕結う今宵ばかりの露けさを深山の苔にくらべざらなん (今晩だけの旅の宿で涙に濡れているからと言って 私達の事を 引き合いに出して比べないで下さい)乾く間もないのに」と返辞する
さくら猫にゃん
今日のはどう?
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