さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
目次へ←遡る時の流れ→


2002年12月23日(月) にゃん氏物語 若紫07

光にゃん氏訳 源氏物語 若紫07

『こんな伝言による会話は 私はしたことがありません 失礼ですが
今夜こちらに御厄介になったのを機に 真面目な相談があります』
と源氏は言う
「何か聞き違いをしているのでしょう 源氏の君に意見するような
きまり悪さ 私は何も返辞ができない」 尼君は こう言った
「そうですが 冷たい扱いと思われてしまいます」と人々は促す
「そうね 若い人は困るが 私はよい 真面目に言われるなら」
尼君は出て来た

『出来心で軽率な話をする者だと思われる時 逆に真面目な相談を
持ちかけるのは 私には不利な状況です しかし誠意を持って話を
しようとしていることは 仏様が知っているでしょう』と源氏は言うが
年配の女性が落ちついて目の前にいると思うと 話を切り出せない
「言われる通り 思いがけない所で知り合い 貴方様から相談される
などとは なぜ前世に根拠がないと思えるでしょう」と尼君は言った

『お母様を亡くした気の毒な姫君を お母様代わりに預けてくれない
でしょうか 私も早くに母や祖母と別れていて 落ちついた心なしに
年月を送りました 姫君も同じような境遇だから 将来結婚することを
今から認めておいて欲しい 私はこんな事を前から相談したいと思って
いたので 今は悪くとられる時で機会が悪いと思っても言うのです』

「それは とても嬉しい話ですが 何か話を聞き間違えていませんか
そう思うとどう返辞をしていいのか迷います 私のようなものを頼りに
している孫娘が一人いますが まだとても幼稚で どれほど寛大な心
でも将来の奥様として つりあうのは無理なので相談になりえません」
と尼君は言う

『私は何もかも知っています そんな年の差などは気にせずに
私がどれほど それを望んでいるか 熱心の度合いを見てください』
源氏がこんなに言っても 尼君は姫君の歳を知らないで言っていると
思って 源氏の希望を気にかけない 僧都が戻る頃をきっかけに
『まあよいです 相談事を話しましたので 実現するのを期待します』
と言って源氏は屏風を元どおりにしていった

もう明け方で 法華三昧(法華経を唱える事に没頭する)を行う
お堂の懺法(せんぽう:懺悔の法要)の声が山おろしの風の音に
混じって聞え 尊くて 滝の音が調和して響きを生み出す

吹き迷ふ深山おろしに夢さめて涙催す滝の音かな と源氏
方角を定めず奥山から吹く風に煩悩の夢も覚め涙がこぼれてくる
その風にのって聞える法華懺法の声と響き合う滝の音だ

「さしぐみに袖濡らしける山水にすめる心は騒ぎやはする
貴方様がいきなり涙ぐみ 袖を濡らした山の水にも 心静かに
住んでいる私の心は動かされることもありません
…もう馴れきったものです」と僧都は こたえた


さくら猫にゃん 今日のはどう?

My追加