さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年12月24日(火) |
にゃん氏物語 若紫08 |
光にゃん氏訳 源氏物語 若紫08
夜明けの空は 満ち溢れるほど霞んで山の鳥たちがどこもかしこも 鳴く声が多く聞えてきた 都人には名前がわからない木や草の花が 多く咲いたり散ったりしていた こんな色とりどりの錦の上に鹿が 出て来るのも珍しい光景で 源氏は病気の苦しみから開放された 聖人は動くのも不自由な老体だが 源氏のために僧都の坊へ来て 護身法を行ってくれた しゃがれた途切れがちに消えそうな声でお経を 読むのがしみじみとし尊きものにも思えた 呪文は陀羅尼(だらに)
迎えの一行が京から山に着く 病気全快の喜びの挨拶がされ 御所の 使いも来た 僧都は世間では見られないような くだものを あれこれ 谷の底から掘り出してまで 用意してくれた 「まだ今年いっぱいは山籠りの誓いがあり 帰る時に京までお見送り できません 折角ご訪問してくれた事が逆に残念に思われます」 などと言いながら 僧都は源氏に酒をすすめた
『山の風景に心惹かれる思いですが 帝に心配をかけさせるのも 恐れ多い またこの山桜が咲いている時期に来ましょう』
宮人に行きて語らん山ざくら風よりさきに来ても見るべく 大宮人に 帰ってから話しましょう この山桜が美しい事を 風が吹き散らす前に見てくるようにと 歌の発声 声使いも 態度も立派な源氏だったので 僧都が
優曇華の花まち得たるここちして深山桜に目こそ移らね 三千年に一度咲くと言う優曇華の花が咲くのに巡り逢ったような 気がして深山桜には目も移りません と言うと源氏は微笑しながら 『長い間に一度咲くという花は見る事が難しいでしょう 私ではない』 と言った 岩窟の聖人は祝杯をもらって
奥山の松の戸ぼそを稀に開けてまだ見ぬ花の顔を見るかな 引きこもっております奥山の草庵の 松の木で作った扉を珍しく開けて まだ見たことのない花のように美しい顔を拝見しました と泣きながら 言って 源氏を見ていた 聖人は源氏を護る法を込めた独鈷を献上した
それを見て僧都は 聖徳太子が百濟の国から得た金剛子の数珠で 宝玉の飾りつきのを 日本にない唐風の箱に入ったまま 透かし編みの袋に包み五葉の木の枝につけた物 紺瑠璃などの宝石の壺へ薬を詰めたいくつかを藤や桜の枝につけた物 などなど 山寺の僧都らしい贈り物を出した
さくら猫にゃん
今日のはどう?
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