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2003年07月06日(日) 女の憂鬱

朝・・・。
男が起きると隣には女が寝息を立てて幸せそうに眠っている。

−早く行かなくちゃな−
男はベッドから女を起こさないようゆっくり離れ、自分の服を取って洗面所に向かって行った。
−起きない内にココを出なきゃな−
独り言が洗面所に響いた。顔を洗っているが、終わったらすぐ服に着替えて出ていこうとしている。歯は磨かないらしい。テーブルの上に何かを置き、その場から立ち去った。ゆっくりとドアを閉めたはずだった。

−白々しい−
女は閉まるドアの静かな音を聞くなりベッドから起き出した。
−分かってるわよ−
男が逃げるようにして行くのが分かっていた様だ。女は何も着ずに洗面所へと向かった。長い煙草を加えて。自分の顔を眺めて何かを言っている。聞こえないが、特に思い詰めて何かを言っている訳ではなさそうだ。むしろおしゃべりを楽しんでいる様子に見える。一人のおしゃべりを。

−快楽の追求なんてもう、うんざりだわ。”心”をくれる誰かを見つけたいモノだわ。もう少しイイ男・・・と言っても、内面がイイ男よ!もう体だけの関係なんて飽き飽きだわ!−
女は戻ってきてから服を纏った。とてもスリムで誰もが羨ましがるようなスタイルだ。着ているモノもおしゃれで、それでいてそれを着飾ることはしない。本当のおしゃれを知っている女なのだろう。また、それが男を魅了することも女は知っている。

−さて、次は誰かしら?−
テーブルの上の5枚の1万円札を掴んで4枚を財布の中に入れた。
残りの1枚は誰かが読んでくれることを祈ってメッセージを書いてテーブルの上へ戻した。
「心を下さい」


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