華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年07月18日(木)

浪速の聖母の安息日。 〜忘れさせて〜

<前号より続く>


俺はチエミ自身にむしゃぶりついた。
俺は両手で腰を押さえつけつつ、チエミの突起を舐め、吸う。

チエミはこういう経験が無い。
恥ずかしいと抵抗し、イッちゃう!と連発し、
俺の髪を掴んで引き離そうとする。

俺だって負けない。
さらに舌で転がし、陰唇まで舌を這わす。

充分すぎるほど潤った。


俺はチエミと、ひとつになった。

 「なあ、なあ、好きや・・・」
「俺もだ・・・」

本気でなくても、この一言が逢瀬のスパイス。
しかし次の言葉に、俺は心を動かされた。

 「忘れさせて、お願い・・・何もかも・・・忘れさせて!」


尼僧でも、シスターでもない。
チエミだって、普通の女だ。


ほんの一時の儚い快楽でも、辛さも苦しさも、何もかも忘れるほど没頭したい。
毎夜に及ぶというバイブオナニーも、きっと現実からの逃避なのだ。
チエミを、必要以上にいとおしく感じる。


年齢の割に深い目尻の皺。
人知れず、試練に顔を歪ませていた何よりの証拠。

俺はチエミの両膝を抱える。
チエミに繋がる部分をより締め付けるようにした。


俺に全身の力を振り絞ってしがみ付くチエミ。
俺も次第に力を込めて、チエミを突き上げる。

俺自身で、チエミのGスポットを圧すように、突く。
あたる、あたる・・・とうわ言のように繰り返す。


そしてチエミの両膝を伸ばして俺の肩に担ぐ。
そのまま彼女に覆い被さり、奥まで差し入れる。
やはり痛いのか・・・顔を歪めるものの、俺をそのまま受け入れる。

 「そのままでええ、そのまま・・・来て」


今度はバック。
チエミを四つん這いにする。
すでにチエミ自身は緩み、雫を垂らして口をあけていた。

細い腰を鷲掴み、全力疾走で腰を振る。
言葉にならない声をあげ、のたうつチエミ。
シーツを離しては掴み、髪を振り乱して俺の律動に答える。




汗と、愛液と、精液にまみれ、ぐったりとするチエミ。
ベッドに倒れこみ、深呼吸を繰り返す俺。

俺も久しぶりに精根尽き果てる。
貧相な体つきからは信じられないほどのパワーだ。

「こんなに激しくなるとは思わなかったよ」
 「私も・・・初めてや・・・」


チエミは男性経験は1人だけ・・・・結婚した旦那だけだった。
淡白だった旦那は、自分のしたいときだけ近寄ってくるタイプ。

愛撫も無い。
下半身だけ互いに晒して、勃てば挿入して、果てれば終わり。
そして自分だけが満足すると、背中を向けて寝てしまったそうだ。

それがチエミ夫婦の営み。

独り取り残されるチエミは、どんな心境で夜を過ごしたのだろう。


「経験1人でも、こんなに激しくして、痛くなかった?」
 「・・・・・なんでそんなこと聞くん?分からへんか」


彼女の肉体を心ならずも開発したものは、バイブレーターだった。

 「私な、バイブでなけりゃイケへん女なんやと思ってた・・・
     本物の男の人のが、こんなに良いもんやって、すごいショック・・・」

「今日は、何回イケた?」
 「数えてへん、覚えてへん、真っ白になってもた・・・・・・」


しばらくベッドで抱き合い、まったりとした時間を過ごす。
今度は和気あいあいとシャワーを浴び、着替える。

ホテルを出ると、すっかり難波は夜の街となっていた。


近鉄難波駅まで送ってくれるとチエミが言う。
俺たちは一緒に歩いた。

次の近鉄名古屋行きのアーバンライナーの出発時間まで、30分以上ある。
俺とチエミは地下街の喫茶店で名残りの喫茶。

グレープフルーツジュースを味わう俺に、チエミが話し掛けてくる。

 「あのな、今日、おもちゃ持って来てへんって言うたやろ」
「ああ、さっきな」

 「あれな、嘘。ホンマは持ってきてたねん」

チエミは黒のバッグに手を入れてみろ、という。
手を入れてまさぐると、紙袋に入ったバイブらしき物体。

「何?今から使おうかって?」
 「何言うてんの!」

「いいよ、今からトイレで使おうか?」
 「アホ!知らんわッ!」

チエミは破顔して、俺に突っかかる。
満更でもない表情だったくせに。


数時間前に逢った時の不健康そうな顔色と別人のように、
血色も良く、肌つやのいい顔になった。

Sexとは不思議な行為だと、つくづく思う。
特に女性はいいSexをすると、女として息を吹き返したかのようになる。


時間が近づいてきた。
俺たちは構内に入りホームに向かう。
アーバンライナーはすでに入線していた。

俺は電車に乗り込み、窓側でチエミを見つめる。
チエミは外から、何とも言えない瞳で俺を見つける。
メガネの奥は、少し潤んでいるように見えた。

俺とチエミの間にある、特急列車の開かない窓。
姿は見えるのに、向こう側の声もまともに聞こえない。

別れの演出にしては、ちょっと切なすぎる。


電子ベルが鳴り、発車の合図と共に、電車はホームから滑り出す。
チエミは俺が見えなくなるまで、手を振りつづけてくれた。

俺も、見える限りで手を振った。
同乗する乗客の視線も省みず。


たった一日であったが、母親を休んだ日。
チエミも、この後大樹のお迎えに向かう。厳しい現実へと帰っていくのだ。




一週間後。
チエミから電話があった。

 「こないだは、ホンマにありがとう」
「いやいや、こちらこそ」

 「あのな、もう一つお願いしていい?」
「改まって、何よ?」

 「クリスマスイブに、もう1回逢いたいねん」
「クリスマスイブかぁ、俺が大阪に行くのか?」

 「今度は私が名古屋に行こぅ思うてんねん」


今は11月初旬。
1ヶ月半後には、クリスマスが控えていた。

別に予定があるわけでもなかったのだが、
一つ気になることがあった。

「大樹はどうするの?」
 「そうやなぁ、まあどうにでもなるんやない?」


俺はそういう返事を期待したんじゃない。
きちんとしてくれれば、きっと楽しい時間を過ごせたかもしれない。

その瞬間、電話で聞こえた大樹の泣き喚く声が脳裏をかすめた。


俺は返事した。
「クリスマスイブの日は・・・・・彼女と、約束があるんだ」


俺に会いたいと言ってくれる気持ちは素直に嬉しい。
俺だって、名古屋の街を二人で歩いてみたい。

もう一度チエミを抱きたい気もある。
前回以上に濃厚なSexも可能だっただろう。 

でも、残された大樹はクリスマスを施設で独りで過ごすのだ。

少しずつ心を寄せてくれるチエミの気持ちは嬉しい。
しかしいろんな意味で、今の俺には彼女と大樹を背負うほどの力は無い。


そんなことは無いだろうが・・・
もし俺とチエミがもっと緊密になれば、さらにどちらも気持ちが傷つく。



 「ホンマか、じゃ、しょうがないなぁ・・・・・・」
夢を壊され、落ち込むチエミ。

 「・・・・・・あ、そう、私な、あのテレコミ辞めたから」
「そうか・・・」

 「平良なら、彼女幸せに出来るな・・・大事にしたりや、じゃあね」


チエミはさっさと電話を切った。
俺は最後までチエミの電話番号を教えてもらってなかった。

その電話以降、チエミの声を聞くことは無かった。




  昼夜構わず 働き通しも
  泣き出す我が子に 眠れぬ夜
  
  苦情の度に 頭(こうべ)を垂れて
  我が子のために 詫びる日々

  か弱い身体で 覚悟を決めて 
  我が子を守ると 鞭を打つ

  疲れた身体に また鞭を打つ
  草臥れ果てた 母の顔   


  浪速の聖母に 安息日をと
  俺も一緒に 神に乞おう
  
  母を休んで 女に戻る
  そんな時間が あってもいい 

  復活したら 母に戻りて
  次の試練に いざ向かえ



とっさにしてもあまりに下手な、俺の“優しい嘘”だった。







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☆ 毎度のご訪問、ご精読ありがとうございます。
  自閉症児への偏見や誤解は、相当根深いものがあります。

  この「華」を通じて、その偏見や誤解を取り払い、
  自閉症者ならびにその家族への正しい理解を計れれば幸いに思います。

  ・・・・・・っても、無理かな(笑)アダルト分野のエロ日記じゃ。
  こういう女性も、試練に負けず頑張っているということだけででも、
  心に留めていてください。

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  次回の「華のエレヂィ。」をお楽しみに。




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