華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年07月26日(金)

怒りと決別の遊戯。 『朝焼け』


<前号より続く>


俺は問答無用に全力で腰を振った。
汗と愛液に濡れた男の肌と女の肌がぶつかり合う。
破裂音が響く。

美砂自身からの濃厚な滑りと匂いが俺を燃えさせる。
Gスポットに当たるらしく、美砂は狂おしいほどの反応を起こす。


剥き出しの尻と、スーツ姿の上半身。
男の欲情に火をつける、見事にアンバランスなコラボレーションである。

女も男の猛火に煽られ、また延焼していく。


 「ダメぇ〜〜〜〜、イッちゃうから〜〜、イックゥ〜〜〜」

美砂は間もなく下半身に鳥肌を立ててイッた。
でも俺は腰の律動を止めない。

 「お願い、止めて、止めて、止めてっ!また〜〜〜っ」
「イキっぱなしになっちゃえよっ!狂っちまえよ!」

 「あああああああああああああ〜〜〜〜っ、ああああああっ!」


俺は脱力する美砂を、強引に引き摺って部屋に入れる。

俺はそこでまだグッタリする美砂を床に仰向けに寝かせ、腿を開く。
そして、まだ勃つ俺自身を正常位から突き入れた。

半失神状態だったはずの美砂が、一気に意識を取り戻す。
俺にしがみ付き、背中に爪を立てて俺の律動を受け入れる。


「平良ぁ〜〜〜〜〜〜、ダメぇ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・」


俺が果てるまでに、美砂は一体何度絶頂を迎えただろう。
俺はこの日2度放出したが、彼女はきっとその数倍は迎えたかもしれない。


美砂は草臥れたぬいぐるみのように、あられもない格好でグッタリしている。
今晩は煙草を吸う余裕も、無意識に叩く憎まれ口も無い。


男をなめてきた美砂よ。
この姿、ざまあ見ろ。


俺は未だ押さえきれない。
玄関先の姿見を部屋に持ち込み、角に置く。

グッタリする美砂をうつ伏せに寝かせ、今度は尻から挿入する。
バックのつぶれた格好だ。

しかし、女という生き物は不思議だ。
グッタリしていても、挿入すれば息を吹き返し、再び喘ぎ出す。


「顔を上げてみなよ」
 「え・・・嘘ぉ」

「どうだ?男に悦ぶ美砂自身の顔は・・・・」
 「・・・ダメぇ止めて、恥ずかしい・・・」

「見てないと、抜くからな」


美砂は恥ずかしさから、嫌々ながらも鏡を見ていた。
快楽に耐え切れないのか、目を逸らすと動きを止めた。

俺が果てるまで美砂はさらに何度も昇天した。



遊戯の終了後。

まだ余韻に全身を痺れさせている美砂。

 「こんな抱かれ方もあるんだね・・・初めてよ、こんなの・・・」

「満足したか?」
 「・・・・・・うん、もうダメよ・・・他の男じゃ満足できないかも・・・」


そこで俺は美砂に告げた。

「今夜が最後だからな」
 「・・・・・え?何故?」

「決めたんだ、俺が。今夜が最後。もう会わないし、抱かない」
 「・・・・・」


虜にさせて突き放す事が、何より辛いはず。
俺は美紀子との経験を悪用しようと考えていたのだ。

百戦錬磨の美砂に、今更小手先のテクニックは通用しない。
意表を突く方法を思いつく必要から、今回の“遊戯”にたどり着いた。



美砂の大きな瞳に、みるみる涙が溢れてきた。

 「嫌よ、そんなの・・・何故、何故私を抱いたの?」

俺はそっぽを向いたまま答えない。
先日のハンドルに伏した美砂の態度そのままだ。


 「こんなに平良の事、好きになってしまったのよ・・・何故抱いたのよぉ?」

「決めたんだ。理由なんか無い」
 「嘘よ、こんな事ってあるぅ?答えなさいよ、何故私を抱いたのよ?!」


俺は言葉にして答える気は無い。
敢えて言葉にするとすれば、「学習しろ」といったところか。


 「答えなさいよぉ・・・・何故抱いたのよぉ!」

俺の身体を、美砂は涙ながらに力の入らない拳で何度も何度も叩く。
美砂は自分の世界で悲劇のヒロインを演じている様子だが、
俺には痛くも痒くも無い。


朝4時。
表には新聞屋のカブのエンジン音が聞こえる。


「最後ったら、最後」
 「・・・・・・ひどい、こんなに好きなのよ、平良の事・・・」

勝手に妄想で俺を作り上げ、自分の理想と大きくかけ離れていることで勝手に落ち込み、
今度は勝手に恋人気取りで、ふられて悲劇のヒロインか。


笑わせるな。



 「もう来ないから」

朝焼けがまぶしい時間。
美砂は玄関先で、足蹴にされたバッグを持ち、俺を恨めしそうに見つめる。


「ああ、もう来ない方がいい」

俺も冷たく突き放す。


美砂は玄関のドアを閉め、階段を足音を立てて下りていく。
俺はやれやれと思い、寝る準備を始めた。


電話が鳴る。
こんな時間に誰だ・・・と思い受話器を上げた。


 「ちょっとぉ!なんで追いかけて来ない訳?違うんじゃない?」

声の主は美砂だ。 

 「いいの?私、本当に帰っちゃうよ!」
「帰れよ・・・気を付けてな」

俺はそう返事をして、まだ未練がましい台詞を並べる美砂を無視して受話器を置いた。


数分後。
早朝の住宅街に、けたたましい程にタイヤを鳴かせて、
アウディは出て行った。


美砂がお土産にと残していったのは、
栄の松坂屋のB1にあったパン屋のミニクロワッサン。

 「行列に並ばないと買えない程だけど、美味しいんだよぉ」

美砂とまだ電話で話していた頃に、そんな話をした。

「今度遊びに行くときに、買っていってあげるよ」


約束は守ってくれたようだ。
俺はありがたく、ミニクロワッサンを戴いた。

口に運び頬張る度に、アプリコットジャムのほのかな甘味を感じる度に、
ちょっとひどい仕打ちだったかな・・・と省みる。

少々ハードな遊戯だったが、
彼女を痛めつける気持ちはなかった。


男という存在をなめる女は絶対に許せない。
なめられる男にこそ、問題の本質があるんだよな・・・

狙った女を自分のものにしようとする男は、気に入られようと何かと気を使う。
それはプレゼントであったり、デートのプランだったり。

女の機嫌を取るようでいて、下心があるのが男。
その下心を見破り、何時しか男の浅はかさに辟易する女。



もう会う事も無いだろうし、美砂とはこれっきりにするのだから。

でも、こんな仕打ちは金輪際にしよう。


俺の気持ちもあまり晴れていない。
後味の悪い、朝を迎えていた。








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俺は数日後の夜に、テレコミに電話した。
そこで新たに入った女性を紹介してもらった。
34歳の主婦で、源氏名をマヤという。


「初めまして、平良です」
 「初めまして・・・ふふふふっ」

「どうしたの?」
 「いや、何でもないの」

「何かおかしい?」
 「そうじゃないんだけどね・・・・私、知ってるの」

「何を?」
 「・・・・平良さんの事」


俺は一瞬心臓が高鳴った。
何故だ?




<以下次号>


☆ 毎度のご訪問、誠にありがとうございます。
  次回のエレヂィは、この話の後日談から始まります。
  ぜひ併せてご覧ください。
  どうぞお楽しみに!


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