華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2003年08月20日(水)

傷だらけの生娘。 〜痣と母〜



<前号より続く>



程なく、次の娘が俺の隣りに座った。
和服姿でしとやかな雰囲気の女性だった。
お約束通り、名刺を差し出してくる。

 「私ね、実はもう25なの・・・オバサンだから他の娘と違う手で目立たないと・・・」

俺が尋ねた和服の訳をそう笑って説明してくれた。


また15分程経って、その娘も他の席に移っていった。


 「ごめーん、たいちゃん・・・待っててくれてよかった〜っ」

申し訳無さそうにマナが帰ってきた。

俺のグラスにブランデーを足しながら、また盛り上がる。
また10数分後、マナも別の席に立っていった。


忙しない雰囲気になかなか落ち着かない。
隣りではまた違う娘に今度は下ネタで盛り上がる野畑の姿があった。
野畑はこういう遊びが好きなのだろう。

会社では見たことの無い、活き活きとした彼が印象的だった。



 「すみませ〜ん、お隣り宜しいですかぁ?」


空いている俺の隣りに、白いスーツの女が現れた。
よく見ると、彼女の顔まで白く浮かんでいる。

その薄暗い店内で見ても判る程、やけに厚化粧なのが印象的だ。


「どうぞ」
 「ありがとうございま〜す」


彼女はまたポーチから名刺を差し出してきた。
女の源氏名は、黛 りりか。
厚化粧だが、一見してまだ若い。


「まゆずみ・・・かぁ。難しい漢字使ってるね(笑)」
 「読めた?この名前ね、なかなか呼んでもらえないの。あとね・・・」

「ん?」
 「りりか、この前お客さんから“AV女優”だって言われたのぉ!」

「見た目がかい?」
 「名前〜っ!もう替えてもらおっかな〜・・・まだ処女なのにぃ(笑)」

「あ、そう・・・道理で男慣れしてないと思った(笑)」
 「でしょ〜っ・・・って本気で思ってないでしょっ」

「・・・バレた?(笑)」
 「いいもん、もうっ・・・誰も信用してくれないんだから・・・」


やけにハイテンションなりりか。
俺も慣れてきたせいか、少々失礼な事も口にしてみたりした。


 「お客さん、見ない顔だね」
「俺、今日がキャバクラ初体験だし」

 「うそぉ、本当はすっごい遊び人でしょ〜っ」
「遊んでないっすよ、本当に・・・こういう店では」

 「分かった!他の店でブラックリストに乗ったからこっちに来た。どう?」
「だから遊んでないんだって(笑)」



りりかがテーブルに手付かずに置いてあった俺のグラスを目にした。


 「水割り、作り直そうかぁ?」 
「・・・そうだね。お願いしようかな」

りりかは近くのボーイにグラスを渡し、新しい物を交換する。
そしてトンクで氷を二つ落とし、ブランデーをなみなみと注ぐ。

若干不慣れな手つきだったが、見た目少々濃い目の水割りが俺の目の前のコースターに置かれた。


 「ごめんなさいね、まだ下手で・・・」
「いやいや、大丈夫・・・でも、その手どうしたの?」

 
りりかの右手には、いくつかのバンソウコウが巻いてあった。
指の根元、指先、手の甲・・・


 「うん、何でもないの」
「そう、そそっかしくてドジなだけか(笑)」

 「ひど〜いっ!こう見えても大変なんだから!」
「何が?喧嘩?」


その瞬間、笑顔に満ちていたりりかの表情がすっと真顔になった。
何か口にしてはいけない話題だったのか。

 「・・・ごめんね、何でもないの」
「そう・・・」

その後も他愛も無い会話が続いたが、俺はりりかの顔に異変に気付いた。


「りりかちゃんの顔・・・それ、痣?」
 「・・・うん」


はっとした表情を見せるが、観念したのかあっさりと認めた。


「もしかして殴られたの?彼氏?」
 「・・・あのね、母なの」

「お母さん?!・・・ひどい痕だねぇ、叱られたのかい?」
 「昔からなの。慣れてるから・・・」

りりかの顔から作り笑顔が消え、伏し目がちに話を続けた。

 
 「うちの母ね、弱い人なんだよね・・・」


りりかが小学生の時に両親は離婚し、彼女は母に引き取られた。
母は昼間働き、家に帰ってから家事に追われる生活が始まった。

友達と遊びたい盛りのりりかも我が侭を封じ、進んで家事の手伝いをして
女手ひとつで働く母を支えた。


 「でもいつしか、母が私を殴るようになったの・・・」
「殴るって・・・拳で?」

 「うん。顔とかね・・・」



<以下次号>






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