華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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2004年03月03日(水) 午前1時の情事。 〜醍醐味〜 |
<前号の続き> 錦を舞う夜の蝶から、家庭に尽くす主婦の鑑へ。 華麗な世界からの見事な変身。 その幸せは、突然崩れ落ちる。 その努力は、突然裏切られた。 旦那の浮気が発覚したのだ。 相手は20歳そこそこのホステス。 深い関係になり、相手が妊娠した事から瑶子にも発覚した。 それも過去に自分が勤めていた仕事の女ではないか。 旦那に全てを話していた。 彼は瑶子の、仕事としての過去は理解していたはずだった。 「私ね、絶対に客とは寝ないって決めてたの・・・ お酒を注いでも、同伴はしても、私は身体だけは別だと思ってた。 旦那にも、その女にも何故?って気持ちで冷静でいられなかった」 瑶子は激しく動揺し、悩んだ。 問い詰めても語りかけても、旦那はのらりくらりと追及をかわし、 自分の都合が悪くなると居酒屋やパチンコへと逃げた。 自分が幸せな未来の青写真が、未来設計が揺らぐ。 家庭に尽くすために抑えていた自分の欲求。 家庭に尽くすために犠牲にした自分自身。 それは、一体何だったのか? 散々悩み、ストレスで髪が抜ける。 今まで張り切っていた母親業も手がつかなくなる。 心成らず、娘にも当たる機会が増えた。 理不尽な母の振る舞いに、動揺した娘が泣き出す。 どうにも見当たらない暗闇からの抜け道。 心身共に疲れ果てた瑶子は、彼の全てを許す代わりに離婚届を作成した。 「それで、今の住宅に移り住んだの・・・」 昼夜に渡って仕事していたあの頃は、まだ未曾有の大不況の入り口だった。 それまでの勢いのままで、まだまだ街に元気があった頃だ。 今では40を過ぎた女に、小学生の子どもが養える程の収入がある働き口が そう簡単に見つかる訳が無い。 昼は桃花台のショッピング街でパートの仕事を見つけた。 そして娘が寝静まった夜に、このテレコミのバイトを始めたのだ。 「だから決めたの。もう一度結婚しようって。娘のために・・・」 結婚相談所に登録し、それなりの相手を紹介してもらう。 しかし現実は、思いのほか冷たかった。 「バツが二つ付くと、よっぽどフシダラだと思われるのかな・・・」 紹介を受けるのは、残念ながら「それなりの男性」ばかりだったという。 部屋に遊びにきたこの日、俺は彼女にその紹介状を何通か見せてもらった。 顔写真、年齢、経歴、趣味、理想の結婚生活・・・ 残念ながら、男の俺から見てもそれなりの相手ばかりであった。 「『休日の過ごし方』で、ゴロゴロしてるとしか書かない男性に、 私は娘とこの先、何を望めばいいのかな・・・って思う。 そんな人と家庭を持っても、明るい未来が見えないの。 でも私だって、きっとそういう人の一人なんだよね(笑)」 紹介状を覗く俺の傍らで、瑶子はそう言って、寂しく笑っていた。 電話で聞いていた声よりも、心なしか落ち込んでいる。 つい先日の事、瑶子との初めてのテレフォンSexの後。 擦れ気味の声で、瑶子はこう俺に切り出した。 「私ね・・・平良に逢いたいな」 「俺に?いいよ、小牧でもどこでも出かけていくよ(笑)」 「本当?でも遠いじゃない・・・」 「片道1時間程度なら、俺のお散歩コースだって(笑)」 「でね、娘が寝てからだから、夜遅くなっちゃうよ」 「俺は24時間営業だから、仕事の時間以外なら動けるよ(笑)」 「もう、調子良いんだからっ」 「瑶子だって昔は昼も夜も働いてたんでしょ?一緒だって(笑)」 俺は瑶子に会ってみたかった。 どういう立場でも、心を許して自分の真実を話してくれた女性だ。 おまけに、彼女は今まだ独身だ。 彼女と堂々と会うなら、今しかない・・・ 指定された日・・・つまり今日。 俺は仕事を切り上げて、準備を整えて桃花台に向かったのだ。 ソファに深く腰掛けた俺の脇に、ちょこんと座る瑶子。 引越し直前の生活感の薄い部屋は、間取りより大きく見える。 「で、何故逢えるのが今日なの?」 「彼が毎週木曜日に出張なの。だからその準備で水曜日の夜は絶対に来ない」 そう言うと、瑶子は俺に身を委ねてきた。 「平良、私の事、ひどい女だと思うでしょ?」 「・・・ああ」 「嫌いになった?」 「いや・・・全然」 「なんで?」 少し間を置いて、俺は瑶子への思いを思い切って口にした。 「瑶子が本当は生真面目すぎるほどの人だって、話を聞いてて思った。 ただ、今はこういう形でしか自分を取り戻せない人なのかなって」 気取って、分かったような口を利いてみた。 瑶子が若い頃から昼夜問わず働いていたのは、実家を支援していたから。 彼女自身も父親が捨てた母親に育てられたのだ。 苦しいはずなのに、辛いはずなのに、娘には一切感じさせなかった母親。 そんな母の苦しみを、母に気付かれないように理解していた瑶子。 男手に悩まされてきた、母子の複雑な双曲線。 それはそのまま今の瑶子の生き様に現れていた。 身勝手なだけの我が侭でフシダラなオバサンとは違う。 「だから、俺は頑張ろうとしている人を嫌いにならないよ。 その代わり、早く生活が軌道に乗ると良いね・・・」 <以下次号> |
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